相続放棄すると代襲相続は発生するのか

文責:所長 弁護士 伊藤美穂

最終更新日:2024年10月29日

1 代襲相続とは

⑴ 代襲相続

 もしも人間が生まれた順番に亡くなっていくとしたら、相続人に関するルールは今よりずっと単純になっていたことでしょう。

 しかし、現実には、親よりも先に子が死亡することもあります。

 その場合、誰が相続人になるでしょうか。

 たとえば、Aさんが死亡した場合の相続人について考えます。

 Aさんに子(Bさん)がいれば、BさんがAさんの相続人となります。

 BさんがAさんよりも先に死亡していて、Bさんに子(Cさん)がいた場合、Aさんから見ると孫にあたるCさんが、Aさんの相続人となります。

 このように、本来相続人となるべき人が死亡などによって相続できなくなった場合に、その子が相続することを代襲相続と言います。

 

⑵ 代襲相続人となれる者

 代襲相続をする人を、代襲相続人と言います。

 代襲相続人となれるのは、被相続人(亡くなった方)の子です(民法887条2項)。

 

⑶ 再代襲相続

 代襲相続をした人が、先に死亡していた場合などには、その子が相続人となります(民法887条3項)。

 たとえば、Aさんが死亡した場合の相続について、Aさんの子であるBさんと、Bさんの子であるCさんが既に死亡していた場合、Cさんに子(Dさん)がいれば、DさんがAさんの相続人となります。

 これを再代襲相続と言います。

2 相続放棄した場合に代襲相続は発生しない

 本来相続人となるべき人が「相続できなくなった場合」とは、その人が死亡していた場合の他に、欠格事由がある場合と廃除された場合があります(民法887条2項)。

 それでは、相続放棄をした場合はどうなるのでしょうか。

 たとえば、Aさんが死亡して、Aさんの子であるBさんが相続放棄をした場合、Bさんの子であるCさんは、Aさんの相続人となるかどうかについて考えてみます。

 この場合、CさんはAさんの相続人となりません。

 相続放棄は、欠格事由にも廃除にも該当しないので、相続放棄では代襲相続は発生しないのです。

3 代襲相続が発生しないことの帰結

 自分の親の遺産を自分の子に相続させることを目的にして、自分が相続放棄をしたとしても、代襲相続は発生しないため、子に親の財産を受け継がせることはできません。

 一方、自分の親が多額の負債を抱えて死亡した際に相続放棄をした場合、代襲相続は発生しないため、自分の子は負債を相続することなく、相続放棄をする必要はありません。

 相続放棄をする際には、ご自分の子の世代のことも踏まえて検討すべきケースがあります。

 相続に関する意向によって、相続放棄すべきかが異なる場合があるので、自身の判断で安易に手続きを行うことはおすすめできません。

 まずは弁護士に相談することをおすすめします。

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